第1分科会 「公共図書館の経営と課題 〜課題解決型図書館をめざして〜」

助言者 宮下 明彦(長野県図書館協会事務局長)
司会者 柳原 康廣(千曲市立戸倉図書館)
発表者 加藤 みゆき(飯田市立中央図書館)

1 発表の概要
 飯田市は、「文化経済自立都市」をめざし、全市一丸となって地域の経済活性化に取り組んでいる。市長の「図書館は中小企業の情報支援の拠点・人つくりの礎」という熱い思いもあり、経済活性化プログラムの一環として図書館において「ビジネス支援サービス」を行う事になった。しかし、“都会型ビジネス支援”は資料・人・スペースの無い小都市の図書館には合わないという結論に達し、“地域で働く人たち個人への支援”として、従来の貸出・閲覧・リクエストをさらに充実させ、蓄積された情報資料を如何に有効的に提供していくか。市民の暮らしや仕事やまちづくりに役立つ資料提供の体制強化をどう図るか。という2点において以下の取り組みを行っている。
(1) 資料をどうアピールしていくか − 利用者目線・捜しやすい書架配置、お金をかけない市報・地元新聞等でのPR、HPのリンク集の充実 など
(2) 求める情報に如何に近づくか − インターネットを用いたレファレンス窓口の設置、無料DBの活用、参考図書の補充、寄贈雑誌・本の有効活用、定期的な職員自主研修 など
(3) 連携出来る機関の有効活用 − 庁内へのレファレンスのPR、美術博物館・歴史研究所の学芸員との連携、企業人向け講演会 など
(4) サービスの利便性の向上 ? 祝日開館実施、夜間繰り下げ開館試行・検討 

2 討議の概要
(1) 飯田市立中央図書館の発表についての質疑応答
(2) ビジネス支援から課題解決型支援へ
・上田市立図書館でビジネス支援をH16から行っている。女性と青年の就労支援中心。大学・ハローワーク・ジョブカフェ信州・県・市・民間団体等関係機関との連携を作ることが大切。
・身近にどんな課題・ニーズがあるかを調査・把握し、それに対応できるよう図書館等の持つ資料・情報をまとめることによって付加価値をつけ、提供していく。
・「自治会役員さん対象エクセル講座」NPOと連携し、大好評だった。図書館は自分達ですべてやろうとせず、地元の意欲ある市民を活用して欲しい。コーディネート力を持って欲しい。
・人が増えない中で日常業務をこなしながら、どこまで図書館の仕事として支援すべきか。
 ・図書館は情報の提供としては最大級やるべき。
・3〜4年周期で職員が異動。大半は嘱託・臨時職員が支える。理事者の考えに左右される。
・行政部門を経験し、広い視野を持つことも大切では。予算獲得の際も有利。
・課題解決に必要な「司書の専門性」変化している。専門機関など外との連携も不可欠。
・利用者側としては、異動があってもDBを活用し、引継ぎをきちんと行って欲しい。
・人が変わってもレファレンスや資料収集を蓄積し、次世代に継続していく事が大切。

3 まとめ(助言者の指導を含む)
課題解決型の課題とは言葉を変えれば困っていること。個人あるいは地域が困っていることに対して図書館は資料・情報の提供機関であるので、その側面から役に立つということ。資料・情報とは図書・雑誌・新聞・行政資料・地域資料・インターネット・データベースなどであり、それらをその課題ひとつひとつのテーマに対してどういう風に役立つように作って提供できるかということである。それは大変幅の広いことで、これから大きなテーマになっていく。
まだ日本でも始まったばかりのことなので、東京都立中央、奈良県立図書情報館、鳥取県立図書館や、県内なら飯田市や上田市などの先進図書館を参考にしてはどうか。また、県図書館協会で研修も行われるので参加して欲しい。
限られた時間であったが、参加者全員で活発な討議が行われた。それぞれが自分の図書館に持ち帰り、新しい視点で図書館を見直し、できることから業務に活かしていきたい。
 

記録 稲葉 聡子(長野市立南部図書館)

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第2分科会 「地域住民のニーズと公共図書館サービス」
〜図書館ボランティアとの協働について〜

助言者 なし
司会者 成沢英之(上田市立上田図書館)
発表者 宮坂順子(原村図書館)

1 発表の概要
原村図書館は諏訪広域6市町村の相互協力により図書館情報ネットワークサービスがスタートしている。学校図書館とのネットワークも結ばれ、小中学校の調べ学習などに有効利用されている。また、図書館の近くに、保育園・小学校・中学校があるため、児童サービスには特に力を入れ、子どもの読書活動推進のため、多くの図書館ボランティアの参画を得ている。
  図書館を支えているボランティアは、自発的に声をかけてくれた人たちばかりで、紙芝居パ
ネルシアター、劇、図書館まつりやクリスマス会への協力をしてくれる。また、今年度新たに
子ども図書館ボランティア(小学生)を立ち上げ活動している。
 これからの図書館活動をより豊かに、更に一歩前進するためにも子どもから大人まで幅の広
いボランティアの参画、連携、協働がよりいっそう求められる。  

2 討議の概要     
・学校図書館とのネットワーク化で新刊を入れる場合調整しているか。(安曇野)
・調整はしていないが、連絡会は設けている。全集、高額な本は図書館で購入するようにしている。(発表者)
・小学生が下校途中に寄るようだが何か問題はないか。私たちの所は、下校途中の寄り道は禁止されている。(南箕輪村)
・問題はおきていない。親が迎えにくるまで待っている子が多い。(発表者)
・ボランティアでトラブルが発生したことはないか。保険はどうしているか。(飯田市)
・トラブルはなく、保険は大きな行事の時1回限りのをかける。公民館、社協登録が多い。
・アカデミー事業の一環とは。司書の方の中学と図書館と兼務というのはどうか。(小布施)
・6市町村の中で原村だけがない、本屋もない。村長の一声がきっかけとなりそのことが大きな力になっている。兼務については、人的ネットワークと思って両方の情報を利用し、前向きに捉えている。(発表者)
・行政が図書館を重要に考えてくれている。中野市は予算を減らされている。ボランティア活動がスムーズにいっているということは、図書館側の苦労が非常に多いと思う。すばらしい。学びたいと思う。(中野市)
・要望事項は、思いや理由をしっかり伝え、2,3年かかってもあきらめずにお願いしていく。そうすればわかってもらえると思う。(発表者)
・外出できない人へのサービスは行っているか。(千曲市戸倉)
・移動図書館はなく、障害者へのサービスもあまりととのっていない。これからの課題。
施設と児童館へは月1回団体貸し出しを行っている。(発表者)
・子どもボランティアの運営には緻密な計画と指導が必要だと思うが、誰が中心にやられてい
るか。(上田市)
 ・館長が主で司書とやっている。時間も要するしけっこう大変。(発表者)

3 要望
・分科会13のうち10が学校関係なので考えてほしい。
・団塊世代からのメッセージというような分科会はどうか。 

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第3分科会 「特別の支援を必要とする方々の要望にあった支援のあり方」 

助言者 尾臺 鞆一  安曇野市穂高図書館長
司会者 新見 しづ子 大町市朗読グループかっこう
発表者 仁科 よし子 大町市朗読グループかっこう
    向井 厳古  安曇野市朗読ボランティアこだまの会


[発表の概要]
1大町市朗読グループかっこう 会員 18名 昭和59年より視覚障害者、図書を読む事が不可能な方を対象に、テープに録音し図書館に貸出し用として設置しています。テープ図書の作成は読む本の選択にはじまり著作権の許諾申請(図書館に依頼)、誤読を防ぐための下調べを行い録音しています。つぎに他の者がチェックして校正を行い完成です。他に声の情報活動として「かっこうだより」社協報の「ボランティアニュース」「福祉のまちづくり」をテープに録音し郵送しています。また交流活動として、テープの利用者(17名)と年1・2回行楽に出かけたり近況報告を聞きながら昼食会等をしております。今後の課題としてカセットテープからCD図書に移行に伴い機器の扱い方を身につける必要があります。他には仲間を増やすことです。

2安曇野市朗読ボランティアこだまの会 会員 25名 平成4年有志が社会福祉協議会に働きかけて会を立ち上げました。活動としては広報、議会だより、三郷文化(季刊誌)の録音テープを作成し利用者3名に郵送しています。2名ずつ録音室に入り間違いのないように確かめ合って行います。この様な活動のための研修会を、年2回行っています。朗読の基本から学習し、広報等をわかり易く聞いてもらう工夫など、朗読の技術向上を目指しています。他に福祉施設、いきいきサロン、児童クラブ等へ訪問して、紙芝居、朗読、歌、手遊びなど楽しい時間を持っています。紙芝居が小さくて見えにくいとの話を受け大型紙芝居を作りました。今後の課題として録音テープの利用者を増やすこと、大型紙芝居が7作できていますが増やしていくかどうか見当中です。また新しく図書館が出来るとか、どのように協力できるかと思っています。

[討議の概要]
1活動費の助成のこと。録音機器のデジタル化に伴い活動費が高額になって来ています。市よりの助成をお願いすると共に、ライオンズクラブ、機器メーカーなどの協力をお願いしたい。

2利用者の掘り起しが個人情報もありむずかしい。利用したい方は居られると思うのであらゆる方法を使ってあきらめずに働きかけていきたい。現実には図書館を介して送っていただいている所が多かった。視覚障害者だけでなく読む体力のない方にも利用してもらいたい。

3録音機器がアナログからデジタルへの変換の時期を迎え新しい機器を使う技術の習得が必要になってきました。すでに講習会をしている所、変換している所もありました。

4新しい図書館が出来るが、支援の必要な方にどんな設備が必要か?対面朗読室は必要か?との質問があり、上田では週1回対面朗読を8人が2人ずつ担当して実施している。利用者が本を持参するが専門書などもあり下調べが大変です。拡大鏡については、伊那図書館では電源を入れれば利用できるようになっているが、それより大活字の本をおすすめしている。

5自宅へ訪問して読むのがいいと思うがその様な活動はあるか?訪問していた方が施設に入り今は施設に伺っている。との回答がありました。

{まとめ}助言者の指導を含む
特別な支援を必要とする方々とは視聴覚障害など身体に障害を持った方、学習障害の方、高齢者、入院患者、施設入所者、受刑者などを指すといわれている。皆さんそれぞれ情熱を持って活動されているが、これからも技術の向上、機器の活用技能の向上など楽しみながら活動してほしい。少ない会員で活動の場が多様化してきています。若い人に入ってもらいましょう。益々機器の費用などお金のかかることが多くなるが自治体にお願いする仲介者として図書館が働きたい。障害のある方々が豊かな生活を受けられるように今後とも協力していただきたい。

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第4分科会  「これからの学校図書館教育(1)」
             〜司書教諭としての第一歩〜

司会者  大沼田眞理子(松本市立並柳小学校)
発表者  堀内京子(長野市立若槻小学校) 林 尚江(岡谷市立岡谷小学校)

1 発表の概要
<発表1>『子どもの本を知る』堀内京子先生
○子どもの本を知ること
・本当によい本を子どもたちに。
 インターネットと違い本にはたくさんの人の手が加わっているのでよい。
    図書館の本は全部いい本ですよと薦められる選書、本揃えをしたい。
・芸術的に優れた絵の絵本。
    中学生でも、絵の見方等を扱っていけばおもしろい。絵を分析できる子どもに。○子どもの本選び
  ・子どもの本をよく読むことが大事。
・「小学生の読書日記」の実践。1人1冊購入し、その中にある本は全部図書館にそろえた。
  ・購入する本を選ぶときはブックリストなどから選ぶ。基本図書目録ですべての分野からバランスよく選ぶ。クーヨン、「この本読んで!」等雑誌からも新刊本を選んでいくとよい。
  ・本好きの友だちから情報をもらったり、新聞の書評や雑誌の書評に目を通したりする。自分の得意分野をもつ。
<発表2>演習『年鑑を使ってみよう』林尚江先生
 学ぶ力を育てる司書教諭の役割のひとつとして「情報を活用する力をつけること」がある。
本はたくさんの人の手を経ていて、奥付で出版社、作った人が分かるので信頼性が高い。ほしい本を探し出すため、レファレンスブックの使い方を知る。
 本の中から情報を見つけるために、目次、索引が分かるようになる。
繰り返しが大切。

2 討議の概要
<発表1に関連して>
○司書教諭の役割は子どもと本との結びつけ
  本の食わず嫌いが多い。「紹介して」と言われるので、紹介したら「いまいち」と言って読まない。携帯小説のようなものがよく、横書きの本しか読めないという子もいる。
 その子の興味ある物や趣味を聞いて選んでいる。
 司書教諭もクラスを持ち、時間のない中ではクラス以外の子、全校の中での働きかけは難しいので、担任への働きかけを大切にする。
 担任に読書の時間を大切にしてもらっている。図書の時間は日記を読まず、一緒に本を読んでもらう時間にする・・・など。
 お話やブックトークをする他の団体を入れている。
<発表2に関連して>
○年鑑を使っての学習
 やらせるのはグループより一人一人がよい。
 できる時間に個人差があるが、早くできた子は「年鑑見てていいよ」図書館の席がグループのようになっているので、そこで情報をもらってできる子もいる
 4年で長野県の野菜の生産高、5年でお米のこととか、担任だったらそれぞれの学年で活用できる。子どもの疑問やつぶやきをとらえて仕組むことができる。

3まとめ
読書、活字離れの子たちをどうするか。先生方にも情報を伝え、学校全体で取り組んでいくことが大切。

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第5分科会 「これからの学校図書館教育(2)」 
     〜学校司書にできること 選書はじめの一歩〜

司会者 岡澤 裕美 (千曲市立屋代中学校)
発表者 由井 尚美 (長野市立篠ノ井西小学校) 柳沢 知恵 (佐久市立切原小学校)
    藤野 美夏 (上田市立丸子北小学校)  奥原 貴美子(茅野市立玉川小学校)


1.学校図書館の選書について
 学校図書館というのは児童生徒・先生方にとって一番身近な図書館で、読みたいときに読めるものや調べたいとき調べられるものがいつでも手にできる図書館でありたいと考えています。それには限られた予算の中で児童生徒・先生方に役立つ資料・図書、そのときに必要な資料・図書を備えてある図書館づくりにした。それには本棚に並んだ図書・資料が旬のものとういか本当に必要なものを並べたい。そのためには「選書」が大事である。
 (1)「学校図書館に求められていること」
学校図書館は情報センターとしての役割(調べたい時に調べられる)・読書センターとしての役割(読みたい時に読みたい本が読める)・落ち着ける場所(各校の対応として)での3つがある。そして、このほかにもプラスアルファーがある。今日は幅がひろくなってしまうので、情報センターとして調べ学習に使える本の選書はどうのようにしたらよいかを考えてゆきたい。まず、必要な資料の情報を得ること。@学習に必要な図書・資料の収集 使える図書・資料の収集(教科・特別活動等年間指導計画.学年便り・学習の進度表.学習に使った図書の記録.他の図書館から借りた図書の記録)A季節 行事などに関する図書B児童の興味関心に対応する図書。まずは、教師・児童生徒とのコミィニケーションを大切にする。蔵書配分比率を見たところ到底及ばないところもあります。いろいろな情報をいただきながら追いかけるのではなく、「あるよ」といえる選書をしてゆきたい。
(2) 「選書基準」
 学校により選書基準が区々である。そこで、茅野市では今年3月に「茅野市小中学校図書館選定基準」を『全国学校図書館協議会選定基準』を基本として定めた。一般基準の中で「1内容は教師向けの図書」に追記「ただし、児童生徒にも資するものであること」。部門別基準の中で「5 翻訳書」は『原則として完訳のもの』に変更し、「9 絵本」は『アニメ的な絵ではなく、こどもが出会うのにふさわしいものであるか吟味する。挿絵に関しても同様に考える』と追記し、「12 伝記・民謡」は『訳者・再話者・本分のいずれかに注意した上で選書する』と追記している。学校図書館にふさわしくない図書して、6項目追記がある。また。心がけて収集する本は『地域・郷土に関する資料一般』『各学校のテーマに応じた図書・資料』の追記がある。
(3) 「選書ツール」
 図書購入する際、出版されている膨大な図書の中からいかに適書を選ぶかは司書として日々苦労するところです。出版された図書の内容や特徴についての情報があれば適書を選択しやすくなります。こうした選択に役立つ資料を選書ツールといいます。評価情報(一定の基準で選択した図書の情報です)が9刊あり、流通情報(前年に出版された購入可能な図書のすべてを対象とする情報です。流通という目的に沿った速報性が特徴です。)が5刊あり、そのほうか新聞の書評、専門雑誌、インターネット書店などの情報も日々あたらしい本が出版される現代においては重要な情報として、4冊提示されました。

2 演習 
(1) 演習の内容の説明 「米の何を調べたいの?」→「どうして米について調べようと思ったの」へ
参加者1人1人の図書館について 自分の図書館にある本を知ろう。自分の図書館の資料を活用しよう。資料の補充に役立てよう。・・・という立場で
(2) 「米」をテーマに パスファインダー 自分の図書館の蔵書より
(3) 「米」から考えられるテーマで ブックトーク 例)お米をはかる単位はどんなのがある?
(4)  グループに分かれて「課題」と「資料」について考え合う。
* 配られた用紙に書かれた「課題」に沿って資料を選ぶ。
* 用紙に選書のポイント等を記入する。
 1.お米作りに関する行事やお祭りはあるのか
 2.イネはどんな植物なんだろう
 3.米作りはいつ・どこから・始まったんだろう
 4.世界中で、お米を主食にしている国はどれくらい
 5.日本特有のお米料理ってあるの?
(5) グループ発表
* 課題と選書のポイントを発表してもらう。
* 各グループが選んだ資料の情報は「米」についての資料一覧表を参考にしてもらう。

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