第1分科会 「佐久地域の図書館の視察を通して、これからの図書館のあり方を学ぶ」

今年度の県図書館大会では、新しい試みとして、佐久地域の特色ある図書館を視察する分科会が設けられました。第1分科会では、創造館を出発し、一路初冠雪の浅間山のふもとの御代田町に向かいました。

御代田町立図書館御代田町立図書館

 最初に向かったのは“エコールみよた”という、御代田町が町民の生涯学習のために平成15年に建てた複合文化施設です。生涯学習室、博物館、図書館の三つが結びついた素敵な建物でした。町立図書館では、“子どもから大人まで、だれもが利用できる図書館”をめざし、各種のおはなし会や映画会を定期的に開催しています。豊富なAVコーナー、静かな閲覧コーナー、明るい幼児コーナーなどが目をひきます。ちなみに、現在の蔵書数は約43,000冊、平成17年度の図書購入予算は9,200,000円。開館から3年、利用者の要望に丁寧に添っているおかげで、利用者、利用冊数とも毎年増加しています。館内の入り口には、ボランティアの皆さんによる季節の飾り物がしてあって、心が和みました。

 

御代田町立御代田南小学校 御代田町立御代田南小学校
続いて向かったのは、町内に2校ある小学校のうちの南小学校です。図書館の廊下の壁には、司書の先生が手作りされた折り紙(おじゃましたときは、柿や栗など)がずらっと飾られていました。南小の特徴は、「読書アドバイザー」の存在です。南小独自の命名だそうですが、児童の読書相談や調べ学習の援助などソフト面の支援をするため、児童が一番多く利用する10:30〜12:30に図書館に常駐しています。アドバイザーの良さは、一人ひとりの読書の実態に寄り添えることです。各学級の週に1回の図書館での時間、あるいは業間休みの個人貸し出しの時間に受ける相談に的確な返事ができます。司書、司書教諭の先生もそれぞれの立場から、“ひたすらひたる”読書を支えてくれています。他にも地域のボランティア・グループの方々が、おはなしの会や人形劇を定期的に開催してくれています。町立図書館とも連携していて、授業や行事で使う本や紙しばい等、団体貸し出しをしてもらっているそうです。

 最後になりましたが、今回の視察にあたり、御代田町立図書館の櫻井館長、土屋係長、御代田南小の清水教頭先生、読書アドバイザーの塚越先生、司書の中山先生、その他関係の皆様にご協力いただきました。ありがとうございました。

記録者 臼田 和子 (佐久市立野沢中学校)

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第2分科会 「佐久地域の図書館の視察を通して,これからの図書館のあり方を学ぶ」
発表者 小林  幸代  井出 雅 (以上 佐久穂町図書館)
佐々木 文子 (佐久中央小学校)

佐久穂町図書館 I 視察の概要
【佐久穂町図書館(13:30〜14:25)】
(1) 説明
   1 配架の工夫
混配により,幼児から高齢者まで一緒の書架で資料を探すことができるようにしている。例えば,小さい子用の絵本のコーナーの隣に家政学の本を配し,小さい子が絵本を探したり,読んだりしている間,保護者が料理の本などを読めるようにしている。
 2 展示内容
 草花,民話や風俗・習慣,佐久穂町の自然環境,鉱物,昔話などの展示を行っている。
  3 図書館で行っている事業
 外部講師による講演会,子ども達による1日司書体験,春・秋の図書館祭り 等
  4 ボランティア養成
  5 学校との連携
小学生の作品を館内に展示 等
  6 課題
 新しくできた図書館なので,今後少しずつ事業を発展していきたい。

(2) 館内見学・質疑応答
  事務室・書庫・データベース・館内の見学・質疑応答 等

【佐久中央小学校(14:35〜15:10)】

佐久中央小学校
(1) 説明  

1 配架の工夫
 調べ学習コーナーを図書館前廊下に設置,新刊本は昇降口に展示,お薦めの本は図書館廊下に展示 等
  2 図書館教育の内容
 毎週月曜朝「おはよう読書」の時間,図書委員会による校内放送での「お話の部屋」 等
  3 ボランティアの協力
 読み聞かせサークルやPTAとの連携,父親による「おやじの会」による読み聞かせ 等
  4 佐久穂町図書館との連携
 資料の借受,公共図書館を知る活動,読み聞かせ
  5 課題
 調べ学習に必要な図書の収集・整理,館内図書資料のデータベース化,佐久穂町図書館等とのネットワーク化

(2) 館内見学・質疑応

II まとめ 
説明を聞き,実際に館内等を見て,疑問点は発表者にその場で質問し答えていただくという体験的な活動を通して,具体的に各図書館のメッセージが伝わったことと思う。有意義で厚みのある分科会であった。                

記録者 小林 康宏(野沢小)

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第3分科会 「公共図書館の経営と課題」 (指定管理者制度)
助言者  吾妻 克彦  (長野市立図書館長)
司会者  足立 則男  (上田市立図書館長)
発表者  池田美似子  (駒ヶ根市立図書館)
  吾妻 克彦  (長野市立図書館長)

写真第3分科会の様子 1発表の概要   駒ヶ根市立図書館  大会資料のとおり
  長野市立図書館   (発表資料が当日配布された)

2 討議の概要
 司会者:  駒ヶ根市立図書館では直営から委託になった業務内容について、来年度指定管理者制度に向けて司書の立場で、また長野市立図書館からは現在の状況についてお話していただきました。二館からの発表でご質問等がありましたら、お出しください。

 飯田市:  委託になってからの図書費と指定管理者制度になってからの図書費はどうですか。

 駒ヶ根市: 図書費に関しては委託時に変わりはありません。委託にあたっての約束事です。

 上田市:  職員の実態について、財団法人はほぼ市の職員ですか。

 駒ヶ根市: 市の100パーセント出資の財団法人で、そこの職員ということで採用された。今まで職員が動かないとか、返事が悪いとかいう反省があった中で改善されてこなかったが、職員が本気になって考えるようになった。民から民の同じ立場ですから図書館の職員も責任がある。それぞれの館の実情がありますので指定管理者がすべてではない。いちばんいい直営の方法をとるのもよい。財団でもよい。図書館は設置の規定がないので、教育委員会が設置の方針を示してくれた。その基本方針に基づいて財団が運営していくという形です。そして職員の確保をする。正規に近づけて就労の安定を図り専門職として働いてもらう。力量の有る司書を育てたい。教育委員会との話し合いで図書費は1,400万円つけてもらったが今は若干少なくなっている。図書館の設置と人的配置と予算を活用しながらやっていきたい。直営になろうと指定管理者になろうとやることは同じです。市民サービスをどう高めるか。5年後評価を受けて立てるように日々努力するつもりです。

 飯田市:  文化センターで契約か。施設毎契約か。指定管理者になると財源はどうなるのか。

 駒ヶ根市: 全体の管理を財団がやっている。館の管理費一本です。各館の事業費は別立て
で図書購入費と図書館協議会の委員報酬については市が直で出しています。

 飯伊婦人文庫: 今までの意見は経営者としての意見として聞いた。図書館のバックアップの元ボランティアとして色々な活動をしている。飯田図書館は地域に目指した市民のための歴史の書庫でもあります。市民が図書館に求めるのは利用だけではない。人格人間形成としての大事な場所です。
駒ヶ根市: 図書館を本気になって考えてもらえる人がいることは非常にありがたい。それぞれの市町村のやり方があります。直営であろうと指定管理者であろうと同じ図書館という土俵の上に立って、いい方法を探り当てたり色々な事例を聞いたりできればいいと思っている。

 須坂市:  飯田市さんはプライドを持ってやっていてありがたいことだと思う。駒ヶ根市 さんも非常に高く評価します。こういう方が行政全般にその分野のエキスパートとして現れなければいけない。長野市さんの指摘されたことについては同感です。住民が何を望んでいるか、それに対して努力をする姿勢が大事であり、運営形態は同じである。基本はコストをいかに下げるか、直営であろうが民営であろうが税金に変わりはない。

 飯伊婦人文庫: 私自身は公営であってほしいと強く思っている。図書館は資料を共有すると いうところに意義がある。必要なお金であれば市民は納得する。図書館は必要なサービスとなればいいと思う。お金は掛かるということを自覚しながら考えていかなければいけない。

 飯伊婦人文庫: 予算の問題でコスト削減といわれているが、文化に対して予算を取ることができないのか疑問に思っている。

 長野市:  嘱託で給与面の違いはありますか。

 駒ヶ根市: 財団の正規職員は、公務員と同じ条件です。嘱託職員は市の給与表に順次ていますが若干安い。ただし年末の期末等は出しています。正規職員をとるのが望ましいが財政的に許せない。職員間の中では、私は正規、嘱託とは言わせない。同じ仕事の中で切磋琢磨してもらう。

 飯伊婦人文庫: 試験があるか。

 駒ヶ根市: 正規職員は採用試験があります。嘱託は一般の公募にかけ意欲のある方を採用しています。

 飯伊婦人文庫: 図書館はどういう場所なのかという根本を見つめ直すいい機会だと思いました。

 司会者: 今、直営の所は直営でいいんです。今後例えば市の行政管理の部分で経費を削減するということで、指定管理者に委託する方法を検討しているところもあるかも知れないが今、直営だから来年の9月から必ずしも指定管理者に移行するということは有り得ない話です。

 飯伊婦人文庫: 飯田ではちゃんとしないと民間になりますと言われましたので、それは危ないです。

 司会者: 皆さんのご意見を聞かずにはできないと思います。

 飯田市: 指定管理者制度というのは、検討してきた経過があります。市民の皆さんの声を反映させる。市民の声が一番大事である。私どもは将来にわたって直営でやるという認識です。財政的には非常に厳しく不安がある訳ですが、そんな状況です。

 茅野市: この問題は行政だけで考える問題ではない。市民の図書館であるし市民が考えて市の財政事情も指定管理者制度がどうなっているのか、市民に提供しているのか、市民の知る権利を保障するのが図書館である。図書館としてきちんとやっていかなければいけないと感じました。

 司会者: ありがとうございました。時間になりました。

3まとめ
   指定管理者制度に移行するにあたって、色々な課題や問題があると考えます。情報提供もひとつだと思いますし、図書館の職員の意識の問題、特に意識改革しないと指定管理者へいってしまうかも知れません。今日はどういうふうに指定管理者を考えたらいいかを分科会のテーマとし考えてきましたので、今日のご意見を参考にして今後の図書館運営にお役立ていただければと考えています。本日はどうもありがとうございました。

記録者 臼井 正子  (市立大町図書館)

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第4分科会 「地域住民のニーズと公共図書館サービス」

 司会者  依田 邦人 (市立小諸図書館長)
 司会者  武田 良平 (中野市立図書館長)
 発表者  田村 公彦 (南相木村ふれあい図書館)

写真第4分科会の様子

1 発表の概要
 大会資料に掲載の通り、南相木村ふれあい図書館の開館への経過、施設概要、開館の状況、及び今後の課題について発表があった。

2 討議の概要
 分科会参加者の自己紹介と、現在抱える自館の「地域住民のニーズと公共図書館サービス」をどのように捉えているかを手短に発言する形で進行する。

 発言の内容についての要点は以下の通りであった。
 ・ 自治体規模によっても違うが、現実は厳しく予算・人員とも残念ながら削減の方向である。その状況の中での住民ニーズへの貢献度は利用人員という数値で量られてしまう。住民から見た評価というのがむずかしく、疑問もあり難しい。

 ・ 職員が兼務でかつ正規職員を少なくし、臨時・嘱託等の職員で賄うようになっている。何でもやらなくてはならないということである反面、境界域の業務では有効に使うこともできる。

 ・ 職員の身分にこだわることなく、カウンターで利用者に対応するときは司書であるかないかにかかわらず同じである。住民ニーズと蔵書という観点では、必要となるものはリクエストに答えるということと考え、他館からの貸出も利用して全てに応えることが必要で、冊数にはあまりこだわらなくてよいのではないか。

 ・ 具体的な要望で、開館時間の延長や祝日開館・月曜日等の定例休館をやめて休館日を最小化するよう要望されるが、予算面や配置職員などで限界を感じている。

 ・ 学校との連携は必要なことであり、学校図書館の蔵書不足を公共図書館から団体貸出で応援している。

 ・ 情報発信はニーズを喚起する。ネットの図書館ホームページ、自治体の地域内のケーブルテレビ、地方・地元新聞など多様に重複して発信する必要がある。

 ・ 図書館ボランティアの発掘・養成が重要である。図書を持ち寄って利用する。選書に意見を取り入れるなど、種々に協働しながら応援し合う形が良い。

 ・ 大きな規模の図書館ではそれなりに予算額も大きいが、サービス対象人口も大きくサービスの種類も通常の貸出から障害者サービスなど広くかつ量的に多くなり、それぞれに対応していかなくてはならない。

 ・ 住民ニーズの掘り起こし方のもっと具体的な内容が欲しい。

3 まとめ
 それぞれ立地条件の異なる各図書館において、それぞれのニーズをどのようにサービスで応えるかがその図書館の評価であり、行政としてその図書館を施策の中でどのように位置づけるかが非常に重要である。
 そうした長期的な方向性と現場の努力とにより、自治体住民の文化的生活の向上に貢献できる図書館につながっていくものと思われる。

                        記録者 岩崎 勤 (諏訪市図書館)

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第5分科会 「視覚障害者のための支援サービス」

助言者  並木壮文(佐久市障害者生活自立支援センター所長)
  司会者  小山靖子(サークルエコー)
  発表者  井出次枝(サークルエコー)

写真第5分科会の様子

1. 発表の概要
(1) サークルエコーは、視覚障害の方のために佐久市の広報を音訳サービスすることを目的としたボランティアグループである。発足は昭和61年、今年は19年目となり現会員数は13名、利用者数は12名。

(2) 活動の内容
1) 広報の録音テープの作成 
・月2回発行される「広報佐久」の内容検討、割り振り後、2人で組になり録音。
・テープの最後に、新聞のコラム、民話等短い読み物を録音。ダビング、利用者へ郵送。

2) 広報以外の活動 
・佐久の民話又は佐久在住の作家の著者の図書テープを作成
・リクエスト図書の録音と希望者への対面朗読

3)今後の課題
・現在、広報録音テープ利用者は10数人。今後このサービスを多くの方に知ってもらい利用してもらうにはどのような方法があるか、行政とのより良い連携をはかりながら進めていきたいと考えている。又、活動の目的を理解し共に助け合える仲間を増やしていきたい。

2. 討議の概要
☆対面朗読について
・ 利用者のお宅に訪問して朗読→プライバシーに触れられたくない→図書テープに移行も。
・ 図書館の1室を対面朗読に利用している所もある。←利用者が通ってくる。
いずれも利用者の高齢化で利用は減少してきている。対面朗読は、図書テープのように一方通行でなく利用者と会話ができる、人生観を聞ける等、私達読み手も利用者から学ぶことが多い。又、その活動が、自分自身の張り合いにもなっているので、利用者が減ることは残念である。

☆サービスの利用者を増やすために
ボランティアの活動には限界があるので、利用者が増え過ぎた時のたいへんな事を考え、今まで利用者を増やすアピールを積極的に行ってこなかったが、行政との連携を大切にすることで解決することもあることがわかった。
障害者と接することの多い民生委員、ヘルパーさんから「こんなサービスがありますよ。」と話してもらったらどうか。

☆活動の仲間を増やすために
ボランティア養成講座のあとなど人は集まる。が、すぐに活躍の場がないと辞めてしまう。「読みたい」という気持ちで参加してきているので、できることからやってもらうことが活動を続けていくことに繋がるのではないだろうか。 

3. まとめ(助言者の指導を含む)
特別な支援を必要とする方々へのサービスということでは、立場によりいろんな悩みを抱えているが、行政と積極的に、又、納得いくまで話すことが解決になる。1つのことに向かって障害者も健常者も同じ気持ちが持てるように、同じ環境を作っていけるようにしていきたい。私たちの活動もその手助けとして、ほんの少しの思いやりを持って続けていけたらと思う。

記録者   小林みゆき(サークルエコー)

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